« 土門拳が子どもだったころ | Hoofdmenu | さんぜ’’’の海 »

20-9-06

音楽

 暗い。

 暗い。

 Cry,baby,cry.

 どこまで行っても暗い。道に迷った。

 三瀬の駅に着いたら、人に聞こう。そうしたら分かるだろうと、たかをくくって酒田を出た。無人の駅舎は、学生を迎えに来た人でいっぱいだ。ロータリーも車だらけ。

だけどあっという間に、エンジンの音が聞こえなくなって、一人残されてしまった。ホステルまでの道のりは、地図を失ったことによって、見当もつかなくなった。うろ覚えのまま、駅を出て、右に。

街灯がともる間隔が小さくなる。虫の音しかきえなくなる。犬が吼えた。小さい犬特有の、高く短い鳴き声。あっというまに闇に吸い込まれた。人家が消えて、山道になる。左に曲がる道。

街頭の光が届かなくなる、その境界に立った。自分の手が見えない。星も月も厚い雲が隠している。

こんな暗闇は久しぶりだ。小さい頃、夏休みは祖父が働いていた伊豆大川にいくのが慣わしだった。ガードレールのないくらい道を祖母と歩いたことを思い出した。ガードレールの下は川だった。不気味だったことを思い出した。

これは、違う道だ。その暗闇を歩いて、ちょっと興奮したけど冷静にそう考えた。

だけど、どうしようもない。

寂しくなって東京に居る弟に電話した。でない。

国分寺に居るはずのタイラに電話した。でない。

つくばのパルイケに電話した。でない。

やばい。これは久しぶりにやばい。

光に集まる夏の蟲のように、当てなどなく歩いた。ついたら小学校、デイケアセンター、自動販売機。

ホステルの電話番号もわからない。人も居ない。

携帯があるじゃん・・・。ネットで調べればいいじゃん。

あっけなく、電話番号判明。駅を出て、左右左右でつくらしい。出だしから間違っていた。街灯が嬉しい。旅館を右に曲がり、赤い橋を渡って左に曲がって、山の中腹に橙色の光が見えた。木々で隠されているが、優しく光っている。


ホステルは、対称じゃない菱形をしていて、入り口が狭いが、中に入ると天井がだんだんと高くなり、床が一段下がることによって、それを強調していた。正面には暖炉と天井まで続く煙突があり、大きな窓が二階までのびている。冬はさぞ寒いだろう。また、柱が無く、壁で支える、箱の建築物だ。二階の客室は部屋ごとに階段状になっていて、廊下によってぐるりと建物内を一周出来る。もちろん、一階からの吹き抜けによって見通しはきくし、開放感はこの上ない。また、壁はほとんどが白色だけども、光の色で決して潔癖を思わせる白ではない。

こんばんわ。

声が響く。音楽だけが流れている。BGMという安物感がなく、そっと流れていた。ピアノとギターが壁にあった。ポスターにはつい先日ライブがあったことが書かれていた。きっと気持ちが良かっただろう。

こんばんわ。

誰も居ない。音楽だけが流れている。気持ちのいい空間だ。

こんばんわ。

ホステルの主人かと思われる、小さな男の子が出てきた。なにやら、ズボンを引っ張ってくる。どこに連れて行こうというのか。君は保育園児だね。しかも、ねんしょうさんじゃないかい?山形弁じゃないが、これじゃ会話が出来ないね。今夜ここでお世話になるものだけど、どうしたらいいんでしょう?まだ、楽しそうにズボンを引っ張る。風呂に入れとでも言うのかい?確かに汗臭いね。

やっと母ちゃんがでてきた。いやいや、助かった。

ホステルは初めてだというと、内緒でまけてくれた。会員価格に。お礼を言って、部屋へ。案内役は、例の彼だ。階段を上り慣れてるところを見ると、みんなを先導してくれてるのだろう。小さい頃からのお手伝いは、いいことだぞ。後ろから行ってみたけど、彼は上ることに必死だ。

先客はライダーだった。千葉を出て、北海道を回ってきたらしい。どうも話があうとおもったら、多摩市に住んでたことがあったようだ。こんなところで、こんな人に会うとは、楽しい。

書きつくせないような、楽しい話で盛り上がることが出来た。風景の描写は出来ても、会話の描写は難しい。すごくほっとする時間と空間で気がついたら深夜の二時だった。もう寝なきゃ。


朝は突然やってきた。だんだんと目覚めるのではなく。いきなり目が開いた。

そとが明るい。すばらしい晴天だった。雲は、夏の雲。千切れ雲がゆらゆらと浮かんで時折、日陰を作ったがすぐに明るくなる。緑がまぶしい。

深夜になっていつの間にか消えてしまった音楽も、心地よく流れていた。大きな窓からは日の光が入って、顔も洗わず、広間にあったロッキングチェアに座る。このまま、また眠れそうだった。外では蝉のかわりに、鳥が鳴いていた。夏は終わったのだ。

Dsc034021
本棚にはあふれんばかりの本。本棚は人を表す。と、思っているので早速探検。なかなか、話が合いそうだ。それだけで楽しい。

Dsc034331
光が優しい。冬は厳しいだろうけど、きっと炎が和らげてくれるのだろう。10月から使うこともあるそうだ。

Dsc034181
テーブルの数より多い椅子。きっとたくさんの人が何かで集まるのだろう。

朝食までの間に、ゆったり時間を過した。本を読んで手紙を書いて、窓の外を眺めて、久しぶりにゆっくりした朝を過した。実家に帰って、朝ごはんを待っている間のような幸福な時間だ。

朝ごはんは、地域の人からわけてもらったものをだしてくださった。有機玄米に、おいしい野菜。プチトマトが苦手なんだけども、こんなに甘いのは久しぶりに食べた。
Dsc034081


朝食後、ライダー氏と写真を撮り「いい旅を」とみんなで送り、『ノーザンライツ』の好きなところを読み返していたら、案内役氏やってくる。

ちゃんと朝飯くったのかい?どうも途中で抜け出してきたようだ。母ちゃんに怒られるぞ。そんなことは構うものかと案内役氏。ムシキングのカードを自慢げに見せてくれる。

と、そのとき。ハチかと思ったらオニヤンマが窓から入ってきた。すごい羽音だ。ハチよりもでかいし、目が恐い。案内役氏を膝に乗せて、しばし観察。

Dsc034241
構図:案内役氏。 シャッター:ねずみ。目標:どっかにいるオニヤンマ。

楽しい幸せな朝だ。


この時の一曲(たいら、もとい岸田風に)            
                     
ヨハン・セバスチャン・バッハ インヴェンション第1番ハ長調BWV722/グレン・グールド

 

|

« 土門拳が子どもだったころ | Hoofdmenu | さんぜ’’’の海 »

Reacties

Laat een reactie achter



(Niet getoond bij de reactie.)




TrackBack

TrackBack URL van dit bericht:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/37024/11974767

Hieronder vindt u links naar weblogs die verwijzen naar 音楽:

« 土門拳が子どもだったころ | Hoofdmenu | さんぜ’’’の海 »