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19-9-06

土門拳が子どもだったころ

飛島を離れる頃、また涼しくなってきて、汗を吸いすぎて飽和状態にあったオックスフォードシャツは、冷たくなっていた。その下に着ていたTシャツは、桜木花道並みに絞れるくらいになって、風邪をひく条件がすべて整っていた。

くしゃみは出るわ、鼻水はでるわ。悪い兆しだ。

船に乗り込み、鳥海山が見えそうな位置に座り、Fの掃除をした。

そのまま寝た・・・。

汗は、すっかりシートに移り、シャツは体温で乾いた。どんな高熱や・・・。

飛島で、一口アワビや魚介類を食べてやろう。と、意気込んでいたが食堂はやってないわ、買うところはないわで、朝の食堂でまたご飯を食べた。

若い、大学生かと思われる男女数人が楽しそうにイカスミアイスを舐めていた。楽しそうだ。こっちは、窓際で海を眺めながら刺身定食をもくもくと食べているのだ。天と地の差。でも、こっちはこっちで楽しかったのだ。

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階下の魚屋に小鯛が並んでいた。

再びエネルギーを得ると、雨は上がっていて、正確には一休みしていて、楽しく歩けた。港で得た地図を頼りに、市街を歩く。静かなものだ。北に向かって歩いていると、石畳の道になり向こうに赤い鳥居が見えた。後ろは高台だったので、見渡せるだろうと思い足を向けた。

立派な木の鳥居で、朱が雨雲に冴えた。階段を上ると庚申塔があって、向こうから猫がやってくる。雨なのに散歩らしい。水が嫌いというのは、どうもこの猫には通じていないようだ。でっぷりとした茶に白の縞がある猫だった。猫に良く会うが、決して好かれわしない。この猫もゆったりした歩みで五mほど前で止まって、すぐに行ってしまった。

日枝神社という。

つくりが面白い。鳥居がある方向、つまり参道に対して、右手に九十度に本殿がある。本殿に大してまっすぐに抜ける大きな道があるが、そちらには鳥居が見当たらなかった。見えないところにあるのだろうか。

すぐ近くには光丘文庫という、小さな資料館がある。結構異様な雰囲気。いつもだったら、こんなところはスルーだ。

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こいつらがいなければ。

郷土関係の資料があるという。ちょうど石原莞爾の集めたナポレオン関係の資料を展示していた。石原莞爾は鶴岡生まれだそうだ。軍人としてのイメージが強すぎて、『世界最終戦論』など、それ以外に浮かぶものがなかったが、面白い人物だ。最後が面白い。鳥海山の麓に集団農場を開いてそこで幕を閉じた。旧軍人がどういった経緯で農場を・・・。

そうしたことや、酒田の郷土史を含め、生業・気候など話してくれたのが、ここの館長さんだ。ナポレオン資料に飽きて辞そうとしたら、この頭髪の薄く、めがねをかけ、背の高い人物にぶつかりそうになった。高い声で驚かれた。

高校の国語の教師に少しにて、好感がもてた。この展示の資料冊子を作って五百人目の来館者という名誉を賜った・・・。そして資料は尽きた。

一応たずねてみた。

「いつお作りになったんですか?」

「五月かな。」

スゲー!!意外と来ていた!一ヶ月に百人は入ってる計算だ。

一日に三人強!やるなぁ。資料を取らない人も居るだろうから、まだ来ている可能性もある。観覧無料だし。

土門拳の話を聴いた。彼は酒田の、この神社のあの鳥居のそばにあった祖父母の家で過すことが多かったそうだ。彼の回顧録を見ても、日和山公園のことや、日枝神社のことが書いてある。

なかなかのガキ大将だったようで、年上も年下も区別もなく、彼の号令がかかると子どもたちがワラワラと集まってきたらしい。この神社で、驚くほどの乱暴さで遊んだのだろうか。あの目のぎょろぎょろした大人は、きっと子どものときもそうだったに違いない。晩年、といっても十一年間の入院生活をする前だと思うが、鳥海山や酒田の町並み、そしてあの最上川をフィルムにおさめたそうだ。きっとここも入ったのだろう。いや、あの天邪鬼は敢えて選ばなかったかもしれない。もし見られるなら・・・。


「いい旅を。」

そう送られた。確かに、これは旅だったようだ。彼に言われて、再認識した。

その後、街を徘徊し、うろうろしている猫を撮りながら歩く。寺をみたり、果物屋で旬は何かチェックしたり。

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その右後ろ足は、いつでも逃げられるように。


それから、迷ったけど早くから開いていたお鮨屋、「こい勢」にあろうことか、こんな格好で入った。駅から近く、大丈夫かなっと思ったのだ。

オールカウンターだよー。大人の視線を浴びる。鮨屋デビューだっ!

「大将!おまかせでっ!!」

財布を確認して、憧れの言葉を発する。

「あっ、握る前に、ちょっとお刺身。あとビール。」
通っぽい、社長と山口県防府に出張に行った際の習いたての言葉。

綺麗な艶と姿の刺身と寿司。

「ほいっイカ!塩かけてあるから、そのままで!」
『将太の寿司』に出てきた鮨みたいだ・・・。

「あぶり太刀魚だよ!これも塩。」
ぷるぷるだ・・・。

「活車えび!地元んだよ!」
シャリの上で動いてる・・・。

「鮟鱇!うまいよー!」
職人技とは、このことだ・・・。

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夕焼けが満足の印。

酒田駅で一時間に一本の南に向かう列車に乗る。高校生の多いこと。帰宅でこれを逃したら、どうなるんだろう。何をしても、何を話しても楽しそうだ。こっちまで笑えてくる。大きな口をあけて寝てしまったけど・・・。

三瀬駅に着いた。

静かで暗い。無人の駅舎の電球が暖かい。

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