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7-4-07

All things must pass.

最近、楽しい。

体調がよくなくて、仕事が思うようにいかなくて、未来の予想がつかないのだけれど、楽しい。

生活している、生きているのが楽しい。

それだけなのに、楽しくて。

一人でいることに慣れてきたのだろうか。

去年のちょうどこの夜。この時間。

小倉駅の構内を走っていた。

新幹線の中で、ずっと頬杖をつきながら、外を眺めていた。

暗い夜空だった。

疲れていて、寝るかなと思ったけれど、一睡もしなかった。

ただ、一つ祈っていた。

小倉の空気は、温い湿った感じがして、コートが煩わしく感じた。

小倉駅からどうしたのか思い出せないが、たぶんタクシーに乗ったか、枝光まで鹿児島本線に乗り換えたか。

ともかく、病院に急いでいた。母と電話で話をするのが怖くて、無機質なメールに頼っていた。

最後まで信じていたかったんだ。

その日から遡ること、二ヶ月。

去年の二月。

たった一日だけ、折尾に帰ることが出来た。朝、冷たい雨の降る折尾駅に立ったとき、いつもと何も変わらないちょっと田舎臭い愛しさを感じることが出来た。警察署のサラになった跡地。塗装のはげたボウリング場とパチンコ屋。不似合いな色のDocomoショップ。

うどんを食べて、少し落ち着いた。

「出汁はやっぱり関西風だなー。」

親父と二人で飯をくうのは久しぶりだった。

「そうくさ。」

こんなに疲れている親父をみるのは初めてだった。親父は自分の親父を看ていた。

喉にチューブが入ってた。腕には点滴。

足は象のように太く浮腫んでいた。久しぶりに感じる病院の異常なまでの清潔さ。

マサヒコ爺は窓越しに曇って淀んだ芦屋の方の空を見ていた。

東京で生まれ育った福岡の冬のイメージそのままの空だ。

ブラインドを上げて、大きな窓からカラスが飛ぶのを眺めていた。

マサヒコ爺の眼はどこを見ていたのか。

丸椅子に座ってマサヒコ爺に話をした。

年末の障子張りで怒られた話、糊をどうやって炊くか、出仕事先の冷えた長い廊下を全部雑巾がけした話、同僚の女の子と喧嘩した話、素敵な先輩の話、家の間取りや近くのスーパーの話、近所のたこ焼き屋の旨い甘納豆の話。

マサヒコ爺はまだ、空を見ていた。

時折、浅い眠りに落ちていくようで、瞼が閉じたり開いたりしていた。

親父が、スケッチブックに50音の表を書いたものを出してきた。「水」とか単語だけのもあった。

親父も自分の親父と話がしたいのだ。

マサヒコ爺はちょっと覚醒したみたいで、酸素マスクを外そうとしている。

何か言おうとしている。

ひゅーひゅー言っててよくわからん。親父と二人で「なんね?」とずっと聞いててもわからん。

「しんどい。」

やっと理解できた。そりゃそうだ。しんどいよ。やっと分かったときは嬉しかった。

「朝から言いよったとばい。」

二言目ははっきりと分かった。冗談言えてる。顔色もよくなってる。笑ってる。

また眠りに落ちた。

親父がコーヒーを買いに行った。マサヒコ爺があっというまに眠りから覚めて、俺を見ている。何かをいいたそうに。

でもわからない。ただ、大きくて、ごつごつした手を握った。

涙がぽたぽた落ちてきた。泣いちゃいけないのに。

マサヒコ爺はそんな俺をまだ見ていた。

こんな風に見られるのは初めてかもしれなかった。

滞在が半日もなく、京都に戻ってきた。

マサヒコ爺は病室を出るときに、おおきな拳を作って見せた。点滴をしていない重そうな右手を挙げて。

この人は強い。本当にそう思った。

それから、二ヶ月。

四月七日夜九時。

妹夫婦、息子、娘夫婦と子ども、母に付き添われて眠ってしまった。

だれかが、「東京からミッチとときおが、京都からかずもが、もう少しで来るけんね!」と言うと、はっと目を覚ましたそうだ。

タクシーが病院に着いたとき。母親は笑いながら泣いていた。

この人の凄いところだ。いつだって、笑っていられる。

叔母は大きな体を小さくして、廊下の椅子に座っていた。旦那さんの叔父は赤い目をしてその傍に立っていた。


マサヒコ爺は大きな口を開けて、本当に寝ているようだった。

ほっぺはまだ暖かかった。

笑いながら泣いた。母親のせいだ。








それから一年。いろいろあって、いろいろあった。

でもやっと、よくわからないけど、何かが何かになっている気がする。

それはきっと良い方向に。

先日、友達の結婚式に出て京都に戻ってある映画を見に行った。

急逝した写真家が出ていた映画だ。

家族や友達、みんなに慕われて、素敵な笑顔の人ばかりだった。

残された妻子が夫の友達や昔訪れたところの人達を訪ねるくだりで、奥さんが言っていた言葉が忘れられない。

良い映画だった。

哀しみも喜びも合わせなれど、哀しみが少ない方が良い。だけど大きな喜びは、大きな哀しみを知らないことにはわからないのかもしれない。

友達の結婚式も笑いすぎて、風邪を引いてるのを忘れるくらいだった。写真が現像からあがって、またそれを思い出した。

人って本当にいいね。

人、大好きです。

Flow,flow flow,current of life is ever onward.(Koubou-daishi)

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